イキリンピック金メダルをあげたいイキり野郎の記録
イキる。
「調子に乗ったりえらぶっていること」を指すネットスラングである。一般的には批判の文脈で使用される。派生したものとして「イキりオタク」という語も存在する。Twitterでは他者に対してやたらと喧嘩腰であったり、彼女がいるアピールを必要以上にする人が「イキっている」とされる。
「あ? やんのかかかってこいやザコw」
「まじで20歳以上で童貞の奴はまじでやべーわw」
この様な発言が"典型的イキり"である。
私はなぜか「イキっている」人間によく遭遇する。私自身もイキっている。あ? 誰が類友だよ。やんのかかかってこいやザコwそのため、イキっている発言にたいして耐性がある。そう思っていた。
"本物のイキり" を知らないだけだったのだ。
イキりとの邂逅
2018年、9月、池袋。
友人とカフェで目的もなく駄弁っていた。私は休日は午前中に予定を入れないと起きれない体質である。そのため、午前中に同じ体質を持った友人とよく集まるのだ。しばらく話しているとお昼が近くなったためか、ガラガラだった周りの席が埋まっていく。そろそろ昼食にするかと席を立ち、いい感じのごはん処を歩いて探すことにした。
しばらく歩いているとヤマダ電機の超大型店舗が見えてくる。「日本総本店」らしい。実質埼玉である池袋に「日本総本店」があるということは、ヤマダ電機は埼玉が日本の総本山だと考えているに違いない。翔んで埼玉 よく出口付近でイベントが行われており、髭男爵やクールポコなどと言った芸人や、名前も知らない様な歌手のステージなどを見ることができる。
その日はポケモンのイベントだったようで、着ぐるみのピカチュウが子供と一緒に写真を撮っていた。微笑ましい光景だ。私達はそれを遠くから眺めていた。
そんな私達の横を3人の男が通り過ぎた。顔はよく見えなかったが、1人だけ帽子を被っていたのを覚えている。
その帽子を被った男が突如として走り出し、口を開いた。
これが、本物か。
イベントから離れた場所で、周りに聞こえるくらいの声で、少し走ることで "俺はやるぜ?" 感を出しつつ、明らかに無害である対象に対し、できもしない技をくりだそうとすることで自らが強いことをアピールする。環境・行動・対象・発言の四拍子が見事にマッチし、これ以上ないイキりを演出している。
さらに素晴らしいのは、「とびひざげり」を選択したところである。ポケモンで「とびひざげり」というわざは、"はずしたときにHPの半分、自分がダメージを受ける" というわざなのだ。つまるところ、めちゃくちゃリスクの高い技である。イキった発言を聞くと、少なからず不快な気持ちにはなるだろう。しかし「とびひざげり」を選択したことにより、その不快感情は一切起こらない。
イキりやろうの とびひざげり!!
しかし イキりやろうの こうげきは はずれた!!
イキりやろうは いきおいあまって じめんにぶつかった!!
イキりやろうは たおれた!!
こうなることが容易に想像できるためだ。
とても高度なイキりをしておきながら、その後のアフターケアも完璧。しかもその全てが絶妙にダサい。
この記事を書いている時点で、このイキりより素晴らしいものはなかった。
イキリンピック金メダルを授与したい。
チャンピオンの座は吉田沙保里よろしく、彼の不動のものになりそうだ。
これを読んでいるあなたの周りにもイキった奴がいるだろう。
しかし、彼らは自分を認めてもらいたいだけなのだ。
イキっているやつを見かけたときは、ぜひ温かい気持ちで見守ってほしい。
どうせ、とびひざげりで自滅するのだから。